政権発足から1年がたち、今年の大綱は「岸田色」の演出が盛り込まれた。大きな論点となったのが、株式や投資信託の運用益を非課税にするNISAの拡充だ。首相は「資産所得倍増プラン」の柱に据え、制度を恒久化させる方針を9月に早々と表明。税調での議論にレールを敷いた。
年間投資枠を拡大しつつ、投資余力がある富裕層に恩恵が偏らないよう1800万円の生涯投資上限枠も設けた。「想定よりも大きい額」(税調幹部)との受け止めもあるが、「中間層が資産形成を行う環境を整備する」という首相の強い意向を踏まえた。
年間所得1億円を境に所得税の負担率が下がる「1億円の壁」の打破も、今回の主要なテーマだった。首相は就任当初、富裕層ほど割合が高い金融所得への課税強化を打ち出したが、金融業界の反発を受けて早々に見送っていた。
今回の大綱でも、金融市場に与える影響に配慮して金融所得課税にはメスを入れず、総所得が30億円を超えるような超富裕層に絞って追加の税負担を求める案を採用。対象は200~300人程度にとどまり、いびつな逆転現象を解消するには迫力を欠いた形だ。
公明党税調の西田実仁会長は会見で「党内にはさらに踏み込むべきだとの意見も強くあった」と認めた。
◆特定の業界優遇の特例も温存
特定の企業や個人を優遇し、税負担のゆがみを生じさせる面がある「租税特別措置」(租特)も多くが延長となる。その一つが、教育や結婚・子育て資金を子孫に一括贈与した場合に最大1500万円まで非課税にする制度だ。利用が低迷し、富裕層が節税対策に使っている懸念もある中、業界や担当省庁の要望で温存された。
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