https://mainichi.jp/articles/20210714/k00/00m/040/111000c
毎日新聞 2021/7/14 14:56(最終更新 7/14 14:56) 1226文字
県が盛り土の連鎖崩壊を説明した図=2021年7月14日午前9時53分、山田英之撮影
熱海市伊豆山(いずさん)地区の土石流で、静岡県は14日までに、盛り土の総量を7万4000立方メートルと推定した。うち5万4000立方メートルが今回の雨で崩落、土石流(5万5500立方メートル)の97%を占めていたとみている。その結果、崩落せずに現場に残った量を2万立方メートルと試算した。【山田英之】
水の流れの集中による盛り土の下の部分の崩壊を示した県の図=2021年7月14日午前9時53分、山田英之撮影
土石流の起点付近に残った盛り土が崩落した場合、捜索活動や復旧作業に影響を与えるため、県は土石流発生の仕組みを推定。数値計算による解析ではなく、現状で入手できた情報を整理し、仮説をデータで検証した。
県によると、盛り土の土地は2006年9月に業者が取得。07年3月、業者は県土採取規制条例に基づいて熱海市に盛り土の届け出書(面積1ヘクタール未満、量約3万6300立方メートル)を提出した。
09年3月には土砂の搬入を開始。同年12月、業者は市に変更届(3段で高さ15メートル、面積1ヘクタール未満、量約3万6600立方メートル)を提出した。
ところが、盛り土の中に産業廃棄物が混じっていたため10年8月、市は土砂搬入中止を要請。11年1月の写真から、この時点で盛り土は高さ最大50メートル、10段程度積まれていた可能性があるという。県は「写真から適切な排水設備は設置されていないように見える」とも指摘している。11年2月には、土地の所有権は業者から現在の所有者に変更された。
県は土地所有者の変更後も、盛り土や地面を削り取る切り土が周辺で行われていたと推定する。許可、届け出の手続きが行われていたのかは不明だ。
県は今回の盛り土崩落について、山の地盤も含めて滑り落ちた深層崩壊の可能性は低いと見ている。盛り土内にたまった降雨や地下水などが噴き出し、盛り土の下部から崩壊。支えを失った盛り土の上部が崩落した連鎖崩壊の可能性があるとの分析だ。今回は長雨蓄積型で、盛り土の中に浸透した量も多かったとみている。
難波喬司副知事は「今回の災害の盛り土(伊豆山地区)は問題だったが、適切に設計、施工された盛り土は直ちに危険ではない。宅地などの盛り土は、一定の審査をして造成している」と語る。盛り土に適切な排水設備を設置していれば、降雨の浸透を抑えることができ、次の降雨の前までに盛り土内の水分を排出できるという。
熱海市伊豆山地区・盛り土の経緯
2006年 9月 業者が土地を取得
07年 3月 業者が盛り土の届け出書(1ヘクタール未満、約3万6300立方メートル)を熱海市に提出
09年 3月 業者が土砂の搬入開
12月 業者が変更届(3段で高さ15メートル、1ヘクタール未満、約3万6600立方メートル)
10年 8月 造成工事がおおむね完了
盛り土に産業廃棄物の混入が判明
10月 熱海市が業者に土砂搬入の中止を要請
11年 1月 高さ最大50メートル、10段積みになっていたと推定
2月 土地所有が業者から現在の所有者に変更
毎日新聞 2021/7/14 14:56(最終更新 7/14 14:56) 1226文字
県が盛り土の連鎖崩壊を説明した図=2021年7月14日午前9時53分、山田英之撮影
熱海市伊豆山(いずさん)地区の土石流で、静岡県は14日までに、盛り土の総量を7万4000立方メートルと推定した。うち5万4000立方メートルが今回の雨で崩落、土石流(5万5500立方メートル)の97%を占めていたとみている。その結果、崩落せずに現場に残った量を2万立方メートルと試算した。【山田英之】
水の流れの集中による盛り土の下の部分の崩壊を示した県の図=2021年7月14日午前9時53分、山田英之撮影
土石流の起点付近に残った盛り土が崩落した場合、捜索活動や復旧作業に影響を与えるため、県は土石流発生の仕組みを推定。数値計算による解析ではなく、現状で入手できた情報を整理し、仮説をデータで検証した。
県によると、盛り土の土地は2006年9月に業者が取得。07年3月、業者は県土採取規制条例に基づいて熱海市に盛り土の届け出書(面積1ヘクタール未満、量約3万6300立方メートル)を提出した。
09年3月には土砂の搬入を開始。同年12月、業者は市に変更届(3段で高さ15メートル、面積1ヘクタール未満、量約3万6600立方メートル)を提出した。
ところが、盛り土の中に産業廃棄物が混じっていたため10年8月、市は土砂搬入中止を要請。11年1月の写真から、この時点で盛り土は高さ最大50メートル、10段程度積まれていた可能性があるという。県は「写真から適切な排水設備は設置されていないように見える」とも指摘している。11年2月には、土地の所有権は業者から現在の所有者に変更された。
県は土地所有者の変更後も、盛り土や地面を削り取る切り土が周辺で行われていたと推定する。許可、届け出の手続きが行われていたのかは不明だ。
県は今回の盛り土崩落について、山の地盤も含めて滑り落ちた深層崩壊の可能性は低いと見ている。盛り土内にたまった降雨や地下水などが噴き出し、盛り土の下部から崩壊。支えを失った盛り土の上部が崩落した連鎖崩壊の可能性があるとの分析だ。今回は長雨蓄積型で、盛り土の中に浸透した量も多かったとみている。
難波喬司副知事は「今回の災害の盛り土(伊豆山地区)は問題だったが、適切に設計、施工された盛り土は直ちに危険ではない。宅地などの盛り土は、一定の審査をして造成している」と語る。盛り土に適切な排水設備を設置していれば、降雨の浸透を抑えることができ、次の降雨の前までに盛り土内の水分を排出できるという。
熱海市伊豆山地区・盛り土の経緯
2006年 9月 業者が土地を取得
07年 3月 業者が盛り土の届け出書(1ヘクタール未満、約3万6300立方メートル)を熱海市に提出
09年 3月 業者が土砂の搬入開
12月 業者が変更届(3段で高さ15メートル、1ヘクタール未満、約3万6600立方メートル)
10年 8月 造成工事がおおむね完了
盛り土に産業廃棄物の混入が判明
10月 熱海市が業者に土砂搬入の中止を要請
11年 1月 高さ最大50メートル、10段積みになっていたと推定
2月 土地所有が業者から現在の所有者に変更